「美容外科や形成外科に行けば、どんな傷跡も消しゴムで消すように綺麗に消せる」 そう思われている方は、実は少なくありません。
しかし、傷跡治療の真実をお伝えするなら、答えは「完全に消すことはできないが、抜糸直後からの適切なアプローチで『ほとんど分からないレベル』にすることはできる」です。
今回は形成外科専門医の視点から、傷跡のメカニズムと、最新の早期介入治療についてお話しします。
💡 なぜ「消せない傷」が存在するのか?
皮膚は表面の「表皮」と、その下にある「真皮(しんぴ)」に分かれています。

浅い擦り傷のように「表皮」にとどまる傷は、皮膚の再生能力でほぼ元通りに戻ります。 一方で、手術痕や深い傷のように「真皮」まで達した傷は、体がコラーゲン線維に置き換わって穴埋め(創傷治癒)を行います。この「穴埋めされた組織」こそが瘢痕(傷跡にみえるもの)です。
一度壊れた真皮の構造は元通りにはならないため、医学的に「痕跡をゼロにする=完全に消す」ことは不可能なのです。
💡 勝負は「術後1週間(抜糸直後)」から始まる!
「傷跡治療は、傷が赤く落ち着いてから始めるもの」と思っていませんか?私も形成外科医なりたてのころは先輩から、傷跡が落ち着くまではwait&seeといって赤みが引くまでそっとしておくものと教わっており、長らく慣習的にそれにならっていたのが現状でした。
しかし、縁あって台湾の傷跡専門のドクターに出会ってからはその概念はもろくも崩れ去りました。
実は、傷跡を最も綺麗に仕上げるための鍵は、術後1週間〜10日目あたりの「抜糸直後」からの積極的な早期介入にあったのです。

傷が塞がった直後は、内部で肥厚性瘢痕(赤く盛り上がった硬い傷)を作ろうとする炎症反応がピークに向かう時期です。このタイミングで適切なアプローチを行うことで、余計なコラーゲンの過剰生成や組織の歪みを未然に防ぐことができるです。過剰新生をほっておくとかえって傷跡が目立つということになります。
具体的には、以下のような早期介入が非常に有効です。
- 創部周囲へのボトックス注射: 傷周辺の筋肉の動き(張力)を抑えることで、傷口が引っ張られて太く広がるのを防ぐ

- エクソソーム(再生因子)注射: 質の良い組織再生を促し、炎症を素早く鎮めてしなやかな皮膚へと導く

- 早期CO2レーザー(フラクショナル等): 創部の微小な段差を整え、コラーゲンの再構築(再構築)をコントロールして質感を馴染ませる

これらに加え、従来のテーピングによる圧迫・固定や紫外線のカット、徹底した保湿を組み合わせることで、「時間が経ってから治す」よりも遥かにきれいな仕上がりを目指せます。
💡 「消す」のではなく「美しく馴染ませる」
形成外科医の傷跡治療のゴールは、魔法のように傷を消し去ることではありません。 「傷のメカニズムを理解し、できるだけ目立たない1本線や質感にカモフラージュすること」です。
傷ができるのを完全に防ぐことはできなくても、「いかにキレイな傷跡として完成させるか」は創傷治癒の初期設計で大きく変わります。
もしこれから手術を控えている方や、抜糸直後で傷跡の経過に不安がある方は、傷が固まるのを待たずに、ぜひお早めに当院までご相談ください。
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